「頭では分かってたんだ…」


「えっ…?」


「こんなことやめなきゃって…」



私たちは並んで歩き始めた。


「相手にも悪いって…罪悪感でいっぱいだったんだ…好きに…なれないんだ…」


……


「お前に言われて決心がついたよ。明日、謝ってくる」


「松原君…」


「どっちにしたって悲しませてしまうけど…」


私は足を止めた。

前を歩く松原君の後ろ姿を見ると切なくなった…



私がいないことに気付いて後ろを振り向いた。



「どうした?まだ、怒ってるのか…」



私は首を横に振った。


「私も…こんなこと言えるような人間じゃないのに…」


沙織さんのことを話さないなんて…反則だよね…



「なんか、隠してるのか…」


「うん…」


「うんって…素直だな…それってオレの為を思って言わないのか?」


「違う…自分のため」


言わなくちゃ…


「実は…」



言いかけたとき、松原君の手が私の口を塞いだ。



「言わなくていい」


「え…」



「他のやつだったら、聞き出すとこなんだけど…それで蒼井が笑顔でいられるんだったら、言わなくていいよ」


「なにそれ…」


「素直になれよ…」


そう言うと歩きだした。


そして、


「なんでだろうな…お前の笑顔を見てないと元気がでない。花火のときは、すごく楽しかったから…」


「……」



「帰るぞ〜」



ねぇ…松原君。

私は松原君の笑顔が見たい。


でも…私の笑顔と引き換えに松原君の幸せを奪っているのかもしれない。


松原君にとっての幸せは沙織さんの側にいることでしょ。


でも、私は今でも大好きな松原君の幸せを知ってるのに…


森田君の温かさや、
山本君の不思議な優しさよりも…



松原君の淋しさを好きな私は幸せなのかな…


揺れる恋が私を縛り付けていた…