どこからか、ピアノの音が聞こえてきた…


音楽室からだろうか。


午後の空気と混ざり合ってフワフワした気分になる。



この授業が終われば…すぐに放課後だ。


沙織さんのことを知らない香奈は私よりも好きって気持ちは真っ直ぐなんだろうな。


私は告白しそこねたけど、香奈には納得出来る結果になってほしい。



ピアノの音が止まったと同時にチャイムが鳴った。




「あぁ…緊張しちゃう…」


香奈の顔は赤くなっていた。


「大丈夫!応援してるから!」


彩夏が香奈の肩を軽く叩きながら言った。


私はそれを見つめることしか出来なかった。


「じゃあ…行ってくる」


そう言うと、松原君のもとへと向かった。



香奈は松原君を屋上に連れ出した。


二人が教室を出ていくと、力が抜けてしまった。



「香奈は偉いよ。自分の気持ちを伝えるんだから」


彩夏が唐突にそんなことを言った。


「…そうだね…」


「どんな理由があるのか知らないけど、結果だけが全てじゃないと思うけどな。香澄…」


「私…?」


彩夏が私を見ながら言っていた。



「じゃあね」


「えっ?帰るの?香奈、待たないの?」



「言ったじゃん。結果は全てじゃない。香奈は松原君の気持ちが知りたいんじゃなくて、自分の気持ちを伝えたいだけなんだよ」


そう言うと教室をでていった。


気付けば私だけしかいなかった。




「私は何がしたいんだろう…」


そんな言葉が自然とでてきた。


教室に響くその言葉は、ただ消えていくだけだった。


私は、沙織さんがいるから…この恋はダメなんだって、思ってた。


でも、違ったんだ…


沙織さんがいるからって、逃げてただけなんだ。



別に付き合うことが全てじゃないのに…


自分の気持ちを伝えることが出来ていれば、何が変わっていたのかな?




今日、いきなりだけど…あの窓から気持ちを伝えてみようかな。



何かを変えるために。