屋上に二人の細長い影があった。



「南さん…?」

森田が驚いたように言った。


そこには彩夏がいた。


「さっきの話…本当だったんだね」


彩夏はさっきの話を聞いていたのだ。


「知ってたのか?蒼井さんが松原のこと好きなこと」


森田は少し、声を小さくして言った。



彩夏はゆっくりと頷いた。


「どうして!相談にのってあげないんだよ。相談相手がいなくて辛いんだぞ。あいつは…」



「だって…私は…香奈の親友だから。もちろん!二人には幸せになってもらいたい。だけど、片方を応援することは…」



二人の間に沈黙がながれた。


「じゃあ、オレが蒼井さんを応援する。それなら文句ないだろ…」



「え…。じゃあ、香奈はどうなるのよ?」



「オレが勝手に応援するだけ…じゃあな」



そう言うと、森田は屋上から姿を消した。



影が一つになった。



「私は…あなたが好きなのに…どうして他の女の子に……」



そう言うと、彩夏の目から涙が頬をつたった。





香澄は教室に戻っていた。



「松原君…」


教室にはいると、松原君と香奈が仲良く話していた。


香奈はすごくいい顔をしていた…

香奈は私に気付くと側に来た。


「松原君と話しちゃった!じゃあね!また明日!」


そう言うと、教室を出ていった。


また…ふたりっきり…



「蒼井…」


急に名前を呼ばれて少し驚いた。


「昨日は、ゴメン…あそこまで話すつもりはなかったんだ。でも、ずっと言おうと思ってたから…よかった。言えて…」



「ずっと言おうと思ってたって、どういうこと?」


私はなぜかドキドキしていた…


「昨日からずっと気になってたんだ…蒼井のこと…」


窓から風がこぼれた。


「昨日…蒼井が沙織に見えたって言っただろ?」


「うん…」


「あれは、違う…蒼井は、蒼井だから…沙織とは違う…」


「うん…」



「それだけ…」


松原君は教室を出ようとした。