「…あえて聞いてあげるけど、その顔はなに?」


ぼけーっと窓の外を見続ける私を、親友の由良が訝し気に見てきた。


「…幸せボケ。みたいな感じに見える?」


なんて皮肉った返事をかえした。


「聞いて欲しそうだったから、聞いてあげたのに…。」


反抗的な私のその態度に、由良は呆れたという顔でため息をついた。


「ウソだよぉー…由良サマ聞いてくださいよ!」

なんて態度を翻してすがりつく私を、ヨシヨシと撫でて話を聞いてくれる由良はやっぱり、優しい。


そんな面倒見のよさに甘えきっている私は、
いつまでたっても親離れならぬ、由良離れが出来なかった。




「ふーん…広人さんが浮気をねぇ…?」


なんてまるで受け合ってくれていない軽い返事に、つい力が入ってしまう。


「いや!浮気というか!?なんていうの、アレ!!魔性の女が現れたのよ!色気ムンムンの!」



力説する私を横目に、さっきは優しく私を見ていてくれた由良はどこへやら。

すっかり興味をなくしたように、由良は講義のメモをとる方に集中し始めた。