Magic Academy ~禁書に愛された少女~

「じゃ、今日は1日使い魔を馴らす感じ?」

そらに言われて、3人はそうだなぁと頷く。
使い魔と契約を交わせば、何でもすぐにしてもらえるわけではない。ある程度、お互いの間に信頼なり上下関係なりを持たせないと、うまく動いてくれないことが多い。

「うーん、じゃぁ私、ちょっと温室にでも行ってくるね」

そういうと、3人は少しだけ申し訳なさそうな表情でいってらっしゃい、とそらを見送った。


「よかったのか?」

シークに聞かれて、そらは首を傾げた。

「何が?」

「お前も本当は、使い魔が欲しかったんだろう?」

言われてそらは、少しだけ苦笑いを浮かべた。

「そりゃ、ね。憧れだもんやっぱり。でも…」

契約を結ぼうとしたときの問いかけを思い出す。


【私達にどんなメリットがあるの?】


言われて何も言えなくなった。確かに憧れではあったが、自分に使役させるという感覚はかなり薄く、どちらかといえば、友人みたいなもの、という認識が強かったのだ。自分がどうしたいのか、口にしてみたが、果たしてそれが相手のメリットにつながるかと言えばそうではない。むしろ、自分のわがままのように聞こえたのも事実だった。

「ま、どっちにしても契約は失敗したわけだし、関係ないんだけどね」

「そうかな…」

「え?」

「…いや、なんでも」

シークが奥歯に何かが詰まったような物言いをする。そらは少し怪訝そうな顔になり、シークに聞き返す。

「…気になるじゃん、なに?」

「なんでもない」

「気になるなぁ…ま、いいけどね」


表情がわからないってこういうとき不便よね。ま、最近はなんとなくシークの声でわかってきたけどさ。


シークが何を言いかけたのかはわからなかったが、今はまだ話さなくていいことだと、本人が思ったのだろう。これ以上追求しても、何も言わない気がしたので、そらもそれ以上は何も聞かなかった。