そんな明衣の様子をやれやれと言った感じで見つめていた美帆子は、話題を逸らそうと口を開いた。
「そうだ。明衣、知ってる?A組の赤坂さん」
「赤坂さん?」
相変わらず口は尖ったままだが、明衣は美帆子の話に食い付いた。
美帆子は悪戯っぽく笑むと、話を続けた。
「何でこんな庶民が通うような学校に来てんのか不思議なくらいお嬢様らしいよ?
しかも、昨日その妹がテレビ出ててさ」
「マジ?そんな有名人うちの高校に通ってんの?」
「そうそう。赤坂財閥って、何十年も前から有名だったらしいんだけど。でね、赤坂さんの妹が凄いの」
「そんなに?」
明衣が訝しげな様子で眉を寄せれば、美帆子はジュースのストローを指先で摘みながら、ニヤリと微笑む。
「二億円の少女って呼ばれてるの」
「に……二億円ンン!?」
明衣は飛び出しそうな勢いで目を見開いた。



