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「あー!あたしのバカ!」
昼休みを迎えても、明衣の機嫌は悪いままだった。
美帆子は困ったように眉を寄せつつも、何処か楽しそうに口元を緩めていた。
「しょうがないじゃん?実際楽しかったんでしょ?」
「楡の授業であそこまで一生懸命になった自分に腹が立つー!」
そう。明衣は口では嫌いだ最悪だ、と言いながら、あの歌留多に大ハマりしてしまい、クラスの優等生を押し退けて絵札を取りに行く程だった。
それだけでも充分恥ずかしかったのに、楡が無表情で、
「急に真面目になったんだ、卯月サン」
と言い、明衣に追い打ちを掛けたのだった。
今まで散々サボり、まともに席に座っていなかった明衣は、真面目という言葉が酷く嫌味に聞こえ、機嫌を損ね、今に至るのだった。
「あの先生、サボってるようで何時もの遊び道具は何気に世界史に関係してるものばっかだし、実はうちらのこと考えてくれてんのかもよ?」
「んなわけないって。絶対サボりたいだけだから、あんなの」
明衣は購買で買ったジュースのストローを悔しそうに噛み締めた。



