ザアザアと雨の音が部室の中に鳴り響く。

デローンと伸びたラーメンのような明衣、本郷に、五月女も何と無く気分がやられてしまい、キーボードを叩く手を止め、遂に突っ伏してしまった。

日光が入らない上、電気も付けていないため、室内は薄暗く、午前中だというのに視界はほとんどモノクロに近い。

パソコンの画面がやたら明るく、死にかけた魚のような表情の五月女を不気味に照らしている。


「…何か依頼が入ればテンション上がりますよ、俺……」

「あたしも……」

「私もよ〜……」


五月女の呟きに、二人は呪文のように答えた。

この三人の精神状況はかなり危ういといえよう。


「…なんか大事件起こらないかな「うわ、暗。電気付けないの?」」


五月女の言葉に被せるようにそう言いながら部室に入ってきたのは、顧問の楡だった。

本郷は頭を上げ、挨拶をしかけて絶句した。


「あー、先生おはようござ……ΣΣ」

「……どうした?」




その本郷の様子に首を傾げる楡の背中には、おんぶ紐で括られた小さな子供──見知らぬ赤ちゃんが眠っていた。



【段ボール・ベビー】