赤信号で車が止まり、明衣は無意識にガラスに映った彼の顔に目が行く。
普段青い目は、夜の闇で黒く染まっていた。
色素の薄いそれは、外界の色に染まりやすいようだ。
明衣はそれを、素直に美しいと思った。
楡は呟くようなボリュームで、更に続けた。
「役に立つか立たないかじゃなくて、自分に何が出来て、今どうすべきなのかを考えるほうが、重要だと思う。
本郷も五月女も、それを知ってるから動いてる。
あいつらに君の無いものがあるように、君にもあいつらに無いものがある。
君は、俺に無いものを沢山持ってる。……俺がいくら頑張っても出来ないことを、君は簡単にやってのけるんだから」
「…………」
「まぁ……なんだ……」
今まで饒舌だった楡が、不意に言葉に詰まり始める。
明衣は不思議に思って顔を上げ、首を傾げた。
どうやら結論をまとめるのが苦手らしく、一つ溜息を吐いた。
そして口を開く。
「もうちょっと、自信持っても良いんじゃないか?ってこと…」
「………!」
楡の話が終わる頃、明衣の自宅の前に車が停まった。



