彼の色素に乏しい髪が、月明かりを受けてぼんやりと輝いていた。
明衣はそんな様子を眺めながら、彼の言葉を待つ。
「……俺はただ、交通手段とか手続きとか、教師として最低限のことをしただけで、別に特別何かをしたわけじゃない。
それに本郷だって、企画を立てたのはそうだが、その目的地を調べたのは五月女で、その五月女も調べる以外は何かをしたわけじゃない。
……君は準備段階では、何も出来なかったかもしれない。でも……」
自然と下がる明衣の頭が、少しだけ持ち上がった。
「麗さんと華さんを楽しませようと頑張ってたし、その場にあった的確なツッコミを入れていたのは君だ。
帰りの車で無茶をしようとした麗さんを止めたのも君だし、危機を切り抜けたのも君の機転の利いた作戦のお陰だ」
楡は疲れたのか、ふ、と短く息を吐いた。
明衣も、彼がこんなに喋っているのは初めて見た。
それに、ボーッとしているようで、きちんと周りを見ている楡に、少しだけ感心した。



