動物園の駐車場に車を停め、皆は解き放たれたように車から降り、縮こまった体を伸ばすように空に向かって背伸びした。
そんな彼らを一瞥しながら、楡は車のトランクから大きめの手提げを取り出した。
「……何それ?」
その様子に気付いた明衣が尋ねると、楡は表情を変えることなくそれを持ち上げ、
「弁当」
と答えた。
明衣は驚いて「ΣΣはぁ!!?」と大声で叫んでいた。
そして、尋ねる。
「え!?何でわざわざ作ってきたの!?」
「………どうせお前等、昼飯俺に集る気だろ?財布軽くなるのやだし……」
無表情のまま、面倒臭そうに答える楡。
「先生料理できるんですかーΣ!?」
「………一応な…」
更に驚いた様子で絡んでくる五月女に、楡は何処か疲れたように答える。
明衣は意外だなと思いながら、その後ろ姿に付いて行く。
明衣の前を歩く彼は、私服を選ぶのが面倒だったのか、淡い空色のシャツにネクタイを緩く巻き、黒いズボンを腰で履いて、白いベルトを巻いていた。
殆ど学校に居るときと変わらない姿に、明衣は少しだけ彼らしいなと思って、口元を緩めた。



