「…………」
車に乗り込んでから、誰もが絶句した。
助手席に一人、後部座席に四人。
助手席に五月女が乗り、小柄な女子が後ろに乗るとしても、些か、いや、かなり狭い。
「広い車借りるとか、無かったわけ?」
「………」
明衣の言葉に、楡は知らん顔で運転している。
舌打ちしたい気持ちを押さえながら、何だかんだと文句を言いつつ、実は動物園が楽しみだった明衣は、窓の外を眺めた。
動物園は市街地から遠く離れた奥地に存在し、車で一時間ほどは掛かってしまう場所だった。
それでも、五月女が言っていた広さと規模は日本一という言葉に、少なからず期待は持てた。
ビルや住宅が見えなくなり、その代わりに、木々や林が窓から見える。
「やっぱり同じトコに行く人は多いみたいね。結構車走ってるわ」
「休みだしね…」
普段も仲が良いのか、華と麗は窓を見ながら会話していた。



