何だか暗くなってしまった空気を和ませる為か、使用人が持ってきた茶菓子を口に運んだ五月女は、その美味しさに感動していた。
「めっちゃうまー!これ、凄く美味しいですよ先輩!」
「本当?私も一つ戴こうかしら」
「全部召し上がって良いのよ。…父の知り合いの会社の新製品なの。まだ公には出回ってないけど、そのうち店頭に並ぶわ」
五月女と本郷のやりとりに、華は嬉しそうに説明した。
小さな袋に包まれたそれは、チョコレート味とチーズ味の小さなタルト。
十分に冷やされていて、クッキーのように歯応えのある生地が美味しい。
明衣も一つ戴くことにした。
「本当だ、美味しい」
「!!五月女食い過ぎ!自重しろこの野郎!」
「らってせんふはへへいーんれひょ?」
「……咀嚼してから喋れ」
本郷が舌鼓を打てば、明衣は五月女の前に出来上がった空袋の山を睨み付け、食べ過ぎを指摘された五月女は口の中をモゴモゴさせたまま言い返し、その行儀の悪さに眉を寄せる楡。
その光景に、麗も自然と笑っていた。



