何だかんだ言って、明衣自身も桑島を嫌っているわけではない。


心のどこかでは、毎朝の口論を楽しんでいる自分が居た。


「そうだ、あのさ。昨日言ってた数学のノート。コピーしてきたよ」


そう言いながら美帆子が取り出したのは、丁寧にファイルされたノートのコピーだった。


実は先日サボった数学のノートを美帆子に頼んでいたのだった。


「うっわ助かるよぉ!美帆子大好きだ!」


「わかったからさ、次からはちゃんと出てよね〜…」


「うんうん!努力する!」


「嘘くさぁ……」


調子が良い明衣に、美帆子は何時も振り回される。


「そーだ。コピー代にジュース奢るよ」


「マジ?やった♪」


けれど、根が優しい明衣の性格を知っているからこそ、嫌いにはなれないのだった。