大きな門をくぐり、玄関というものは無いのか、土足で中に上がり込んだ。
そこでは使用人が一列に整列しており、華が目に入った瞬間、一秒の狂いもなく一斉に全員が頭を下げた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「お客様がお見えよ。お茶と菓子を用意して」
その光景に唖然とするaucメンバーを尻目に、華は使用人に指示を出している。
つくづく世界が違う奴だな、と明衣は思う。
「思ったんだけど、体の中に宝石があるって、有り得るの?」
本郷が首を傾げる。
すると、華が答えた。
「医師も珍しいケースだって仰ってたわ。体内の炭素や、その他栄養のバランスが絶妙にマッチして、そうなったんだと思うって。
今は大丈夫だけど、もしこれから大きくなるようなら摘出するそうよ」
心配そうな表情の華。
楡が廊下や柱に施された、美しい装飾を眺めながら呟いた。
「だとしたら、中年は皆二億円の価値があるってことか?」
「………何で?」
明衣が訝しげに尋ねると、楡は大真面目なのかよくわかないが、いつものように無表情で答えた。
「尿道結石とか、胆石とか。体に石出来たりするだろ?」
「……それ、違くねぇ?」
「……違うのか?」
「大分違うわ……」
明衣は溜息を吐きながら、首を傾げる楡を見上げた。



