放課後、部室に向かう途中にふと窓に目をやると、重たく浮腫んだ雲から飽和した水が降っていた。
楡は淡々と窓をたたき続ける雨粒を、感情のこもらない瞳で見つめた。
───もう、良いんだ
雨の日は、嫌いだった。
けど、もう、過ぎた話だ。
「あ、楡! 依頼は!?」
廊下にそのまま立っていると、部室のドアから顔を出し、こちらに声をかけてくる明衣と目が合った。
「……自分で宣伝すれば」
「んだよ、使えねーな」
何げに辛辣な言葉を吐きながら明衣は部室に引っ込んでいく。
「先生、コーヒー入りましたよ!」
五月女がこちらに振り向く。
本郷が微笑む。
「依頼持って来い!」
明衣が頬を膨らます。
そうだ、これが今の居場所だ。
「……ん」
手渡されたコーヒーは、アメリカンだった。
【小さな復讐者】完