依頼人は緩くウェーブの掛かった髪を、耳に掛けるようにそっと触ってから、戸惑った様子で話し始めた。
「私、赤坂財閥の娘で、華『ハナ』と申します。今回の依頼は、その……妹の麗『ウララ』の事で……」
「麗!?……って、もしかして二億円の少女と呼ばれる、赤坂麗!?」
依頼人──華の話に割り込み、五月女が興奮した様子で尋ねる。
怪訝そうに細い眉を寄せた楡が、そんな彼を黙らせるように画板でその頭をバフッと殴った。
「酷いですよー」と言いながら殴られた箇所をさする五月女に、「話の腰を折るな」とスパッと言う楡。
華は五月女の問いに頷きながら、話の続きをし始める。
「彼の言う通りで……麗は、先日のテレビ番組でそういった呼ばれ方をするようになったの。
そのせいで周りからもちやほやされたり、今迄そんなこと無かったのに、いきなり知らない会社の人が訪れたりしてきて…」
華は溜息を吐いた。
本郷は依頼内容を纏めるためか、先程楡から渡された画板にプリントを挿め、何やら書き込んでいる。



