「俺、学校行きます」

「………へぇ」


沚は、卯月宅に戻り、翔太とこよりが帰宅したのを確認し、夕食中にポツリと、しかし決意を含んだ口調でそう言った。

当の言われた本人達は呆けた表情で、夕食のカレーを口に運んだ状態のまま固まっている。

その様子を気にするふうでもなく、沚は続けた。

「本当は、翔太さんに拾ってもらったあの日、俺は両親の仇をとってやろうとか、馬鹿なことを考えてました。でも……」

沚は膝の上で握りこぶしを作ると、顔を上げた。

「俺、ちゃんと学校行って、卒業して……えっと…」

口籠もる沚を、柔和な眼差しで見つめる翔太とこよりは、不思議そうに話の顛末を見守る明衣や麻衣の頭を撫でた。


「翔太さんとか、こよりさんみたいな…教員になりたい、です……」




この日から、沚は教師になることを目指し始めたのだった。