コーヒー代は楡が払うと申し出ると、芳三は「悪いな」と一言告げて、仕事に戻っていった。
喫茶店に一人残った楡は、目の前にある冷めた二杯のコーヒーを見つめながら、分厚い封筒をクシャリと握り締めた。
自分が今、何をしでかそうとしているのか、冷静に考える時間が必要だと本気で思った。
世間的に見れば、既に解決した事件を個人的な考えと我が儘で蒸し返し、あわよくば犯人に刑罰を与えたいと思っている。
こんなにも危険で、迷惑極まりないことが有ろうか。
──俺は………
結局、あの日から何も変わっちゃ居なかった、って事か……
何処からともなく、雨音が聞こえた気がした。



