その日は教師と喧嘩することも、置き勉を注意されて逆ギレすることもなく、平和に一日を終えた。
放課後を迎え、そう言えば昨日aucだかという変な部活に入ったことを思い出した。
美帆子は所属している吹奏楽部の練習に行ってしまったので、仕方なく明衣もaucの部室へ向かうことにした。
階段を下り、相変わらず薄暗い廊下を歩く。
此処は最近使われていないようだ。
明衣自身も、この学校に入ってもう一年以上経つが、こんな教室があったことは知らなかったし、昨日初めて来た。
他の教室と何ら変わり無い、普通のスライド式のドアを開ければ、昨日より薄くなったものの、まだ煙草の匂いが鼻を刺す。
「こんにちは〜……」
まだ何と無く慣れない空気の中、明衣はそーっと中に入り、挨拶をする。
教室に入って直ぐに目に入るのは、昨日も座った革製の無駄に綺麗なソファー。
それは四角い木製のテーブル(これもかなり良いものだろう)を挟むようにして二つ、向かい合わせておいてある。
そのテーブルには、煙草の吸い殻が山盛りになったガラス製の灰皿が置かれている。
思わず吐き気がした。
そのソファーの後ろには天井からカーテンのようなものがぶら下がり、狭い教室を仕切っている。
昨日、楡が煙草を吸いながら出てきた所だ。
黒板の隣には、小さなドアが付いており、隣の教室に行けるようになっていた。
昨日は気付かなかったが、それなりに整理されている部室だった。



