◆
明衣、五月女、本郷の三人は、市民文化会館にやってきていた。
今日は明衣の親友である美帆子の吹奏楽部の定期演奏会だ。
「美帆子ちゃんは何やってるんだっけ?」
「えーと…何だったかな?ホルン…?だっけ」
「違うわよ、バリトンサックスでしょ?」
三人は適当な会話をしながら受け付けを済ませ、会場に入った。
その時、セッティングの最終チェックをしていた美帆子と目が合う。
「頑張ってね」
「…ありがと」
明衣が声を掛けてやると、美帆子は照れ臭そうに、ふわりと微笑んだ。
「美帆子ちゃんは、明衣ちゃんと違って落ち着いた雰囲気があるわね」
「……どーせあたしはガキ臭いですよーだ」
本郷の何気ない発言は、明衣の深層心理を深く傷付ける事になった。
そんな明衣だったが、実は美帆子たちの演奏よりも、今ここに居ない楡の方が気になっていた。
いつもならば、何だかんだと言いながらついてきてくれるし、車も出してくれる。
部活が遅くなった日は送ってくれたりもするのに、最近は部活にろくに来ないで帰ることが多い。
──何でアイツのことばっか考えてんのよ、あたし………
明衣は苛立ちを誤魔化すように、演奏会のプログラムを眺めた。



