あからさまに不機嫌な顔をしながら、明衣は続ける。
「立ち番ならそれらしく挨拶とかしろよ」
「……オハヨーゴザイマス」
不満そうな明衣の言葉に、至ってやる気の無い声が返ってくる。
コイツ……と明衣は楡に聞こえない声で呟いた。
せっかく間に合うように来たのに、気分は最悪だった。
教室に入ると、案の定皆驚いたように明衣に挨拶してきた。
通常時間に登校しただけなのに、こうも驚かれるのはおそらく自分だけだろうと、明衣は思う。
「珍し!!何かあったの?」
「別にー。昨日桑島の説教逃げちゃったから、罪滅ぼし?」
美帆子が尋ねてきたので、明衣は半ば溜息を吐くように答える。
──昨日アイツにバカにされたし……
明衣は朝見たあの蝋人形のような、能面のような無表情が頭に浮かんできて、思わず眉を寄せていた。



