「─……で、当時の人々は───…」
あぁ、またか。と。
明衣は教壇に立つ人物を眺めた。
外は雨が降っており、午前中だというのに電気を付けなければ室内は薄暗い。
そんな日は、目の前の彼はいつもと違った。
黒板に細い字で大量に文字の羅列を書き、その人物・時代・国にまつわる秘話を途切れることなく話し続ける。
彼・楡沚は、雨の日はまるで別人だった。
何が彼をそうするのかはわからない。
ただ、
無口な彼がひたすらに、言葉を紡いでいく様は、違和感以外の言葉では表せなかった。
彼は、雨の日はテンションが高いのだ。