そこから顔を出したのは、明衣のよく知る人物だった。
「……あれ?卯月サン、ホントに真面目になったの?」
「テメー何で此処に……」
明衣の眉間に皺が寄る。
そこに居たのは楡だった。
楡は、怠そうに紫煙を吐き出しながらカーテンを開け、テーブルに置いてあったガラス製の灰皿に煙草を押しつけた。
「……何でって…俺、此処の顧問だし」
「顧問!?」
驚いた明衣に、こそっと本郷が答える。
「一応部活って事になってるから……顧問の先生も必要なのよ」
「だからってコイツ?」
「あら?結構良いわよ?確かに無愛想だし、言葉もぶっきらぼうだけど、悪い人じゃないわ」
「………学校で煙草吸ってるけど?」
明衣が怪訝そうに楡を睨めば、彼は教室の隅のコンセントに刺さった消臭プラグを見た。
そして、困ったように頭を掻き、一言。
「……おかしいな。アレ効かないのか?」
「匂い消したって意味ないでしょ!?校内禁煙、常識じゃないの!」
「……ホームルームは朝8:30からだ。常識だろ?」
「それとこれとは話が別だよ!」
さっきまでおとなしかった明衣が急に物凄い剣幕で怒りだしたので、本郷と五月女は呆然とした顔で、それを見ていた。
明衣はこの日から、この得体の知れない部活・aucの仲間入りを果たしたのだった。



