さて、五月女との漫才(?)も一段落し、明衣はギターをソフトケースから取り出した。昨日は徹夜したとはいえ、あまり曲には取り掛かれていない。
コードを見て、押さえるだけで一日が終わってしまったのだ。
「難しいなぁ……つーかaucってマジで何でもやっちゃうんだ……」
明衣は誰に言うわけでも無く、一人呟いた。すると、本郷がさり気なく明衣の隣に腰掛けながら、その独り言に答えてくれた。
「何でもやるわよ。それが私の目指した部活だったから」
その言葉に、明衣は思わず楽譜から目を離し、本郷の顔を見た。
「え?じゃあ、aucは蘭先輩が作ったんですか?」
「そうよ。私が一年生の頃に、ね」
本郷は、明衣の問いに少しだけ目を細めながら答えた。指はスコアのコードを押さえている。
「……何で、部活を作ろうと思ったんですか?」
明衣は知らず知らず尋ねていた。本郷は楽譜から目を離さずに、口だけを動かし始めた。
「………私が入学したての頃のヨリ高はね………」