それぞれクラスに励まされたりしながら、部室に向かって本格的な練習を始める。
部室は古いので防音などはされておらず、特にドラムの音は廊下にだだ漏れであった。ドスンドスン、と地響きのように辺りに響く。
それに少し苦笑しながら、メンバーはドアを開けた。
「こんにちは〜!先生早いですね」
五月女がベースを背に担ぎながら言えば、楡はスネアを叩く手を止め、「まぁな」と小さく答える。
言わなくてもお分かりだと思うが、勿論楡も初心者であり、ドラムなど触ったことはなく、楽譜の見方も判らない。
そのため、昨日インターネットで調べ、教本を購入して練習していたのだ。
「あ、先生のドラムソロでテンポ決まるんで」
さらっと爆弾発言をする本郷に、楡はスティックを取り落とした。確かに、城ケ島に渡された楽譜……スコアを見ると、そこはドラムソロということに成っており、他の楽譜は休みに成っている。
「先生で、決まるんですからね……?」
黒い笑みを浮かべながら言う本郷。楡はスティックを拾いながら、「肝に銘じます」と棒読みで答えた。



