指先が痛むのは、明衣だけではなく、ベースを担当することに成った五月女も同様だった。
ふっくらとした指先が、まるでドアに挟んだ時のようにジンジンと痛む。
ギターに比べ弦が太く、指に刺さる感覚は辛くはないが、その分強く押さえなければならないので、やはり指に強く食い込むことには変わり無い。
「いたた……しばらくパソコンはお預けかなぁ……」
誰に言うわけでもなく、五月女は一人呟いた。
すると、クラスメイトの一人が、五月女の様子に首を傾げた。
「どした?元気ねーじゃん。つーか、朝ベース持ってたよな?バンコン出んのか?」
五月女は苦笑する。そして頷いた。
「そうなんだよ〜。初心者だから指痛くなっちゃって」
「だろうなぁ、頑張れよ」
「あは、有難う」
五月女はそのクラスメイトに感謝しながら、指の鈍痛に顔をしかめた。



