「と、言うわけで。楽器買いますか」
「いい加減にしろォオォ!んな金有るわけねぇだろうが!てめーで買えや!全額負担しろやァア!」
本郷は更に暴走する。楡ですらそんな彼女に飲み込まれており、いつもの飄々とした態度はどこかに消え失せていた。
ただ一人、明衣は自分の立ち位置を確定させていた。
すると、本郷がニヤリと笑う。
何なの、この人。キャラ崩壊してるよ。
明衣は燃え尽きたように目を細める。
「赤坂事件での報酬が沢山残ってるのよ。良いものを買っても半分以上は残るわ。フフ……」
本郷は既に危ない人だ。五月女はここまで壊れた彼女を未だかつて見たことが無いのか、目を白黒させながら棒立ちである。
「……なんか怖い……」
城ヶ島も思わず呟いていた。
それが聞こえたのかどうかは定かではないが、本郷の笑みは深まるばかりであった。



