明衣は本郷の動作一つ一つに、いちいち目を向けていた。フレットを行き来する左手、ピックを滑らせる右手。
太さの違う弦を押さえる華奢な指。
その一つ一つに、本郷の音楽に対する愛情というか、気持ちを感じた。
「そう言えば、もうすぐバンドコンテストですよね?先輩は出ないんですか?」
その時、学校の予定表を眺めていた五月女がふと顔を出した。本郷は「そうだったわね」と言いながら、スタンドに立て掛けられたギターの弦をビーン、と弾いた。
「出てみたい気持ちは有るけど……バンド組むのが大変だし」
そう言いながら、彼女は長い睫毛を伏せた。
彼女のそんな表情は初めて見るな、と思いながら、「そうですか」と明衣は呟いた。



