これでも足の速さには自信がある明衣。
帰ろうと思ったが、生憎逃げた方向は玄関とは逆方向で、階段を駆け降りて奥に逃げると、すっかり薄暗い廊下に来ていた。
蛍光灯はチカチカと点滅を繰り返し、こんな古い場所が有ったかと明衣は首を傾げる。
取り敢えず、ドタドタと足音が聞こえたので、近くの教室に隠れることにした。
手前のドアに手を掛ける。
立て付けも悪くないのか、するっとそれは開き、明衣は素早く教室に入った。
つん、と鼻を突く煙草の匂い。
使われていなさそうな割に、掃除は行われているのか、埃っぽさはない。
まさか、不良の溜り場に来てしまったかと、恐る恐る振り向こうとしたその時。
「あ!ご依頼ですか!!?」
「……へ?」
やけに明るい声が、背後から飛んできた。



