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時は流れ、放課後。
何時ものように狭い机に勉強道具を詰め込み、カバンの中はペンケースのみという状況を作り上げる。
美帆子は吹奏楽部に所属しているため、帰りのホームルームが終わると、直ぐに音楽室へと居なくなってしまう。
「さっさと帰って寝よう」
「馬鹿野郎職員室来い」
明衣の独り言に、後ろから返事がした。
明らかに怒気を含んでおり、これから説教をします、と遠回しに言っているような声だ。
明衣が恐る恐る振り向くと、そこには顔を怒りで染めたリトル……いや、桑島が仁王立ちしていた。
「…今すぐですか?」
「当たり前だ。来い」
「無理です。帰って『ポリスのお仕事』の再放送見るから」
「録画しろ」
「絶対無理!」
明衣はカバンを引っ掴むと教室を飛び出した。
「あ、コラ!今日という今日は許さんぞ!」
桑島も教室を飛び出して後を追った。
突如始まった追いかけっこに、クラスも溜息を吐いた。



