いつもより何倍も時間をかけながら歩き
ようやく家の前に着いた。
もう夕方だからか、雨のせいだからか
辺りは暗くなっている。
「…じゃあ、また明日ね」
「ありがと。ご飯は食べてく?」
「んーん。今日は二人とも早いって聞いたから、ご飯位は作ってると思う」
大和の家を見ると、確かに明かりが灯っていた。
「じゃあ、明日」
そう言って後ろを向いた時、声をかけられた。
「さなちゃん」
「何?」
そして、ゆっくりと触れる唇。
いつもよりも優しい感触に胸がときめく。
唇が離れると、強く抱き締められた。
「今のは消毒。
…僕、さなちゃんが誰かとキスするなんて本当に許せなかったんだ。
ましてやあの安藤だなんて…」
そこまで聞いて、あたしは大和を少し離して顔を見た。
「…ちょっと待ってよ。
安藤さんの事知ってたの?」
「…前にさなちゃんが、"安藤さんがかっこいい"って言ったの覚えてる?
だから去年の文化祭に行った時に、どんな奴か見ようと思ったんだ。
そしたらミスターコンで優勝してたでしょ?」
「それで…」



