「さなちゃん」
ふいに後ろから声をかけられる。
「華耶を許してくれて 本当にありがとう…。あいつもきっと、幸せになれるよね」
「当たり前だよ。じゃないとあたしとの約束を破る事になる…」
「うん…。
華耶、ね。仕事辞めるんだって。さっきの人と一緒にバーで働きたいから って。
今日の朝母さんに聞いたんだ」
「うん…。幸せになるなら いいと思う」
そこまで決めてるんなら、あたしはもう何も言わない。
これから先に、華耶さんの身に何かあったとしても きっと乗り越えられると信じているから。
「雨…降りそうだし…校舎戻ろうか?」
「うん。……いや、待って!!!」
歩き出そうとしたあたしの腕をツンと引っ張って
顔を赤らめた大和が口を開く。
「何?」
「あの…ね。まだ僕らの事…ちゃんとしてなかったなって…」
……そういえばそうだよね。
華耶さんの事を先にはっきりさせてから と思っていたのに
重要な事を忘れていた。



