だから と華耶さんは続ける。あたし達はただ耳を傾けるだけ。
言いたいことが 小さくしぼんでいく。
理解しようと、気持ちが優しくなる。
「誰かに頼らなければ分からなかったなんて、良い年なのに恥ずかしいけれど。
今はきちんと理解してる。私を許さないで。許される資格なんてないんだから
そして、幸せになってよ…。
私に言える立場じゃないけど
不幸だった分、今はお互いをより一層必要としてるんでしょう?
あなたたちが幸せになってくれたら 私はまた歩み出せる」
「―――――あなたの言う通りになんてしない」
「長谷さん――…」
大っきらいで 憎んでいた相手なのに 「はいそうですか」なんて言えるわけない。
だから、精一杯の あたしなりの反抗。
「あたしはあなたを許します。
それが私からの唯一の仕返しです。
私なんかに許された事を屈辱に思って。
そうすれば同じ過ちなんて犯さないんだから。
忘れないで。
そして
幸せになってよ センセ?」
悪戯に微笑んで見せると 華耶さんは手のひらで口を抑え、大粒の涙を流しながら大きくうなずいていた。



