「逃げよ?」
「え?」
言うより早く 大和はあたしの手を握って駆け出す。
「ちょっとー!!メインイベント、どうするつもりですかーーー!!?」
司会者が叫ぶのを背中で聞きながら あたし達は走る走る。
息を切らしながら。着いたのは体育館の裏にあるなだらかな丘だった。
「ちょ…休憩…」
肩で息をするあたしとは違い、涼しげな顔で「大丈夫?」と顔を覗き込んでくる大和。
体力…あるんだね…
「…いい天気とは言えないけど、見晴らしはいいよね」
いつの間にか頂上近くまで登って来ていたらしいその場所から目下を見下ろすと、校舎も、集まった人も かなり遠くに見える。
ただやっぱり、雨雲が空に掛かっているせいで暗く見えるけど…。
「大和。あたし、やっぱり大和が好きなの。
大和も…そう思ってくれてるんだよね…?」
こちらに向かってくる二つの人影を見ながら、訊ねた。
「…僕は、今までも これからも、きっと。さなちゃん以外に誰かを大切に思うなんてできないと思う。
家族とはまた別な感情として だけど…。
また、やり直せるなら。
僕のしたことを許してもらおうなんて思ってないんだ。
だけどまたやり直す事ができるなら
僕は二度とさなちゃんを離さないって 誓うよ」



