「だからね…」
「もういいよ」
大きくため息をつきながら制止され 光君は痛々しい笑顔をあたしに見せてくる。
「いいんだ。僕なんかの事を見てくれてないって分かってたから。
辛そうな表情をするさなさんを放っておくなんてできなかったんだ。そんな顔をさせる奴からなら俺でも奪えるんじゃないかって 幸せにできる自信があるって自惚れてた。
どんなに時間をかけてでも僕を好きになってもらおうとしたのに…
こんなに早く”大切な人”が現れるなんて ツイてないよなー」
「ごめ…なさ…!!!」
泣きながら謝るあたしに、彼は苦笑しながら
「謝られるのが一番キツイんだけど」
と言った。
じゃあ… 何て言えばいい?
…知ってる。今一番相応しい言葉。
「好きになってくれて ありがとう…」
今できる 精一杯の頬笑みで。
それだけで光君は納得してくれたみたいだった。
「じゃーね、先輩」
笑いながら壇上を駆け下りて行ってしまった。
そしてあたしは、今の事態を目の当たりにする。
「キース!キース!キース!キース!」
おいおい…何で今度は全校生徒があおってくるわけ??
かーなーりー
恥ずかしい事をしてたんだって 今更気づく鈍感さ…



