呆れながら教室から一歩足を踏み出そうとしたその時。
「あ。占いじゃないけど、助言を一つ」
安藤さんが怪しげな頬笑みであたしに向かって何か言おうとしていた。
…参ったな。助言なんて聞きたくないのに。
「…なんでしょう?」
聞きたくないけど 逃げたら安藤さんの事だ。
聞かせるまでしつこく追いかけまわしてくるだろう…
「いい子だ。
…いい?男ってのは、時に女よりも女々しくなるもんだ。それが見苦しい事だって分かってる。
だけど、必死で何かを守ろうとしてる証にもなるんじゃないかな。
女から見てみっともないと思われようが、男は自分のやる事に対して誇りを持ってたりもする。
それが間違っていようが 正しかろうが そんな事はどうでもいいんだ。
何よりも自分に酔ってるんだからな。
でも…」
時間が止まった気がした。
「それが精いっぱいの愛し方なんだって 気づいてるか?」
安藤さんが 何を思ってそう言ってくるのか
事情も知らないはずなのに
何も知らないはずなのに
だけど その言葉はあたしの凍った心を溶かしていく。



