「…いい加減にしろよ。いつまで説明させるつもりだ?」
腹が立つ。
「いい加減にするのはてめぇだっつてんだろ。また殴られたいか?
…いいか。俺や、他の連中がさなを諦めたのは確かに さなの幸せを願ったからだ。
でもな。
そう思うには、それなりの相手が居るってことに気付いて納得した上でのことだ。
告白もせずに諦めて行った奴らは、さなの側に俺が居たからだ。付き合っていないにしろ、好きな女を 他に守っている男がいたら諦めてもおかしくない。
…言うのは癪だけど
俺が諦めたのもお前が俺と同じようにさなを守ってる事に気づいて あいつもお前が好きなんだって分ったからだった。
しかも俺よりも前からずっと側に居て
誰よりも親しそうにしてて
誰よりもさなを愛している奴だったから。
…そうじゃなきゃ易々あいつを諦めたりしない。
だけど お前は何を理由に諦めた?諦めるだけの理由があるのか?
無いから今でも未練たらしくしてるんだろ?
中途半端な事をして 一番さなを苦しめてるのは お前だ」
……ずっと嫌っている奴で
俺の事も嫌ってるはずの奴からそんな言葉を聞くことになるなんて。
それが何よりも衝撃的だった
そしてどれだけ心を揺さぶったか計り知れない。



