「はいはぁーい!あたしは1年のクラスからまわりたいッ」
「薫ちゃんの魂胆なんてお見通しなんだからね。却下」
「あらやだ。あたしの魂胆が真希に分かってたまるもんですかっ」
薫ちゃんは、ぷいッとそっぽを向いてしまった。
「…はいはい。わかりましたー。
じゃあ、薫ちゃんの男探しに付き合うか」
行こう行こう と真希が先陣を切って歩く。
その後ろで『何でわかったのかしら?』と、真剣に考え込む薫ちゃんだった…。
うちの学校は各学年に4つのクラスがある。
あんまり大きくはない学校だけど、全員の名前と顔を一致させるには少し無理がある。
特にあたしたちみたいな帰宅部は、後輩と関わる事すらないので
知っている人は皆無と言ってよかった。中学の後輩もいるかもしれないけど、未だに会った事はない。
だけど、薫ちゃんだけは違った。
「あっ!あの子、森下君って言うのよ?幼さが残ってて可愛いと思わない?」
「あそこに居るのは阿部君。実は双子で、隣のクラスに弟が居るんだけど、二人ともかっこいいわよねぇ~」
と、次々にあたし達の知らない情報を教えてくれる。
何でも、入学式のときに名簿にチェックを付けながら見ていたらしい。
美男子マニアもここまで来ると本格的な犯罪者に思えてくる。



