トン…トン…
階段を上る音がする。…誰?
「フフ…来た…」
笑いながら自分も服を脱ぎ捨てて、ジャンプをするようにベッドを揺らす。
扉を見つめながらシーツを頭から被り直して
「…さぁ。楽しい時間の始まりよ」
耳元で囁いた。
「さ…なちゃん…」
―――――…………
「ほら、今言ってくるのよ。何のために小芝居したと思ってるの」
はちきれそうな胸元の
ブラウスのボタンをとめながら冷たい目で命令をする華耶。
そんな作り物の胸になんて興味が湧かない。
こちらも出来るだけの冷たい目で「分かってるから、命令するな」と言う。
何が可笑しいんだろう。
こんな事をして手に入れても心は華耶に向かない事に気付いているんだろうか。
それ以上何も言えなくなった僕は静かに部屋を出る。
「…さなちゃんと別れても
今の華耶だけは、絶対に好きにならない」
聞こえない程度の声で呟いて部屋の扉を閉めた。



