「………華耶さんなの?」
ビクリと彼の体が跳ねる。
答えなくてもそれで全てが分かってしまった。
「いくら…不可抗力だとしても
それが華耶さんなら、
あたしは許せない」
噛み締めた唇が酷く痛む。
怒りに震えるのはこれが初めてだった。
「華耶さんとの過去に何があるの?
好きだったんじゃないの?
…少なくとも、あたしの目には華耶さんの大和へ向ける気持ちが "異性として好き"だって見えてるよ」
「違う!あいつは…
あいつが俺と寝たのは、そうしないと壊れてしまうから…」
「"寝た"?」
あまりにショックな言葉を聞いてしまい
その他の言葉が耳に入ってこない。
大和も、しまった という感じの表情をしている。
「…そんなに華耶さんが好きなら
あたしなんか振って華耶さんの所に行けばいいでしょ!?」
「さなっ!!」
リビングを抜け、ローファーに足を突っ込んで玄関扉を開ける。
どんな話しの流れでそう言ってしまったのか
飛躍し過ぎていて自分でも分からなかった。
それに、大和の家から飛び出して来た時には 頭が真っ白で
もう何も考えられなくなってしまったからかも知れない。



