「これは…そういうんじゃないから…」
「じゃあ、どういう事?
…もしかして、あたしを避けてたのもそのキスマークのせい?
見つかったらヤバいって思ってたって事?」
腹の中の黒い部分が
あたしの口を支配して、大切な人を苦しめる。
自分で質問しておきながら答えさせる暇を与えない。
こんな事言いたいんじゃないのに
ブレーキが壊れた車みたいに どこまでも どこまでも
止まることなく口が動くんだ。
「…余計な心配をかけたくなかった」
やっと一息ついた所で、背中を丸めた少年が話し始めた。
「こんなの…ッ…俺が好きで付けられたんだって思うのか?
ずっと
ずっとずっとずっとずっと
さなだけを見続けてきた俺が
やっと手に入れたものを易々と手放すようなマネをすると思うのか?
不可抗力だって…
どうしてわかってくれない?」
私を見上げるその目は
今にも泣き出しそうな程に潤んでいた。



