小悪魔男子





パシッ!



気付いたら、額に当てられようとしていた彼の手の甲を叩いていた。


「さ…ッ…触らないでッ!!」


立ち上がりながら、精一杯の抵抗をする。


大和にとってはそれが何よりもこたえている様だった。


「僕…ただ心配して…」


「心配?
誰のせいで気分悪くしたと思ってるの?

ねぇ。


襟付きのシャツを着てるのは、ソレを見られないようにするため?」


"ソレ" の所で、首を顎でしゃくるように指す。


「!!」


襟で素早く首元を隠すが


「もう、遅いよ」


もう遅い。



小さく繰り返して、視線を落とした。



高そうなカーペットに小さく付いた茶色いシミを見つけ

"勿体無い"

と心で呟いた。



こんな時にそんな事を思うのは

冷静なのか


現実逃避をしているのか



分かりかねる位紙一重だった。