あたしはなんだか、ぽっかり空いた胸の間から”現実”がすり抜けていって
事実を受け入れられずにいた。
けれど失笑するほどのショックは隠しきれない。
「…とにかく、今日真希のお家に行ってみましょ?
会えばきっと打ち明けてくれると思うの。それで、できる事はやってあげましょうよ」
薫ちゃんの提案で、放課後に彼女の家を訪れる事になった。道はあたしが知っている。
いつもよりも15分遅れで学年主任が来て、今起こっていることを大まかに説明した。
教室がざわめき立つ。
あたしにはそれが耐えられなくて耳をふさいだ。けれど声は小さな隙間から顔をのぞかせる。
「…の先…と………が…」
「すげー。こんな……みたいな…んだ…」
みんな好き勝手言ってる。
何なの?
そんなに面白い?ドラマみたい?
…だから何?みんなそんな恋がしたいって言ってたじゃん。でも本当にあると好奇の目で見るってどういう事?
このざわつきを止めようともしない学年主任にも腹が立って
あたしは立ち上がった。



