ピルルル…



真希らしい無機質な音で、彼女のケータイは着信を告げた。



「…あ、ちょっとごめん」




そう言って席を立ち、トイレの方へ消えて行ってしまった。



「電話ならここで受けてもいいのにねぇ」


確かに。


「人に聞かれたくないような相手との電話なんじゃねーの?」


「まっさかぁ~!!ざわざわしてるから聞き取れないと思ったんじゃないかしら?」



薫ちゃんと和樹のやり取りを聞いて、少し胸がチクンとした。



真希は誰にも何も言わないから…。





でも、あんなふうに人目を気にして電話をかけているのを見かけるのはここ最近の事なんだよね。



何か問題でもあるのかな??






足早に戻ってきた彼女は、両手を合わせながら謝って来た。



「ごめん!ちょっとお母さんが怒ってるみたいだから…帰るね」



「え?大丈夫なの?」


「うん、いつも遅いんだからたまには早く帰れってうるさくて。

今度埋め合わせするから!!」




そう言って、逃げるように行ってしまった。