そしてまた一方は。

「魔導士よ」

「なあにアダッヂ……レオナルドだったわね」

「曲がりなりにも私は、後世に語り継がれる存在になっているらしいが、私が今可奈子にしてやれる力添えは『花を咲かす』こと位しかないんだ」

「それが貴方の『力』なのね」

「ああそうだ。だから私はそのことを隠して修行するのをはぐらかしていたんだ。炎を吐くことも嵐を呼ぶことも出来や……」

「レオナルド!」

可奈子は毅然とした声音でゴブリンの言葉を遮った。

「レオナルド。貴方は確かに万能だったかも知れない。でもそんな器用な貴方は知らないでしょう。ひとつのことを追い続ける、不器用な人生の素晴らしさを」

「不器用なことが素晴らしいだって?!」

ゴブリンは石のように立ち尽くしたまま動かなくなってしまった。