「今日も暑いな。こりゃまたガキんちょ共がたくさん来るぞ?」

「そうですね、しっかり気を引き締めていかないと」

「目の醒めるようないいオンナでも来てくれれば、もっと張り合いも出るってもんなんだがな。ガハハハハ」


 あれから数ヵ月が経って季節は夏。

仕事が無い時はこうしてボランティアでプールの監視員をやっている。どうやらあの件が有ってから、人命を救助するという使命に燃えてしまったようで……先輩監視員の指導のもと、こうして市民プールの安全に目を光らせているのだ。


「いい女でもがきんちょでも、命の重さに変わりは無いですよ、先輩!」

「またまたぁ。そんな固い事言ってると、イザという時に身体がガチガチで動かないぞ? ガハハハハ」


 豪放磊落を絵に描いたような彼なのだが、なかなかどうして頼りになる先輩だ。名の有るライフセーヴィングコンテストで幾度も入賞している強者だった。

しかし俺がここへ来てからというもの、そういう緊急の現場には出くわした例しがない。多分今日の一日も、平和に過ぎて行くことだろう。

でも何も無ければそれに越した事は無いのだ。楽しそうにはしゃぐ子供達の笑顔を見ている時が、俺の至福の時間なんだから。