「ハハッ、俺の思い過ごしだよな。幾らなんでもあそこから飛び込むなんて、女の子にゃ無理だ」


 この川は河川敷きにしても結構な広さがあるし、橋だってかなりの高みを通っている。上から覗き込んだだけでも足がすくんでしまうに違いなかった。



翌日──────────────



 今日もニュー御殿の製作は捗り、完成も間近となっていた。1日の汚れをシャワーで落として風に当たり、火照った身体を冷ましているとまた、橋に彼女が佇んでいる。


「また来てるよ。今日も元気無いな」


 そう呟いた俺の声が彼女に届く訳もないのだが、徐に首をもたげて辺りを窺い出す。


「死ぬ位の心構えが有ったら何でも出来るよ。早まったらイケナイよ?」


 彼女に聞こえる筈も無いが、俺はそう願って止まない。

田舎のちえ(従妹)も年の頃から言えば彼女とそうは変わらない筈で、ちえはと言えば彼女のようにスタイル抜群とは決して言えないが、いつも屈託の無い笑顔で周囲に元気を分けて回るような子だ。

どんな悩みが有るのかは解らない。しかし彼女にもあんな悲し気な姿より、眩しい笑顔の方が似合うのは確実なのだ。


「今日は帰りなさい」


 彼女は何かに打たれたように背筋を伸ばし、足早に川向こうへと消えて行った。