交番に戻り……


「本官が悪かった。本当に済まない」


 三塚さんは俺にしなだれ掛かって謝罪する。俺はもう何とも思って無かったけれど、怒った振りをしていた。


「おたくのお陰で放火犯を逮捕出来た。感謝してるんだよ、ホントに」

「ははは、三塚巡査。もう怒ってませんよ。大きな被害が出る前で良かったですね」

「本官を許して貰えるのか? 有り難う、ホントに有り難う」


 三塚さんは大袈裟に泣き真似をしてから微笑んだ。その後数日して「金一封と感謝状が出たから取りに来てくれ」とパトロールの途中、御殿に寄ってくれたので、俺はわくわくして道を急いだ。


「コンニチハ。感謝状を頂けるそうなのですが」


 俺はあくまでも「金目当てじゃ無いんだぞ」という所を前面に押し出して、少し斜に構えつつも胸を張って呼び掛けた。


「ほぉぉい。すぐ行くから」


 奥の部屋から現れた三塚さんは、額とのし袋を持っている。

 放火犯を捕まえたんだ。きっと何万か貰えるに違いない。

俺は込み上げてくる笑いを抑え込み、覚られないように自然を装った。


「この度は犯人逮捕にご協力頂き、有り難うございました。以下同文」


 三塚さんはもっともらしく背筋を伸ばして額を差し出す。