丁度いい季節になった。寒くもなく、暑くもなく。さすがに明け方ともなると冷えきった身体が俺の眠気をひっぺがし、小用の為に寝床を出なければならない時もあるけれど……。

でも今は、川面に映り込んだでっかい太陽を見詰める俺を、優しく秋の風が撫でて行く。

肌には少しヒンヤリと感じるその風も、どこからとも知れない夕飯の匂いを運んで来て、心をジンワリと温めてくれるんだ。


「今日のお日様はまた特別綺麗だな、うん。やっぱりここが一番の絶景スポットだ」


 どう流れ着いたんだか、川岸に有る軽自動車程の大岩に登り、沈み行く太陽を眺めるのが俺の1日で一番有意義な時間だ。

太陽との角度がベストマッチしている時は、あの橋を通る電車の窓がキラキラと茜色に輝いて、その沈み行く姿とのナイスコラボレーションを見せてくれる。

あいにく今日、その光景には巡り会えなかったけれど、いい具合のウロコ雲が空の大部分を占領していて、昼から夜のグラデーションが、それは見事な色合いを見せている。


「赤、オレンジ、ピンク、水色、紫、灰色……あんなごちゃごちゃした色の取り合わせで、どうしてこんなに美しいんだろう」


 そのカオスとも言うべき混在した色は、暖色系一辺倒だった先程とは違って、夜の帳を降ろすべくそれぞれの色合いを冷ましていく。


「きょうも1日が終わったなあ。……さあこうしちゃ居られない。火の支度をしないと」